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何十年という長期間にわたり返済を続けることとなる住宅ローンですが、この長い返済期間において、予期しない経済的な問題が生じ、返済が困難になることもあります。無い袖を触れないまま事態を放置すれば、最終的には競売・強制立ち退きという最悪の末路へと進むかもしれません。
最悪の末路を避けるためには、住宅ローンの返済が困難になった段階で速やかに対策を打つことが必要です。対策にはいくつかありますが、不動産の売却は1つの有効な選択肢となるでしょう。
住宅ローンの返済が困難になる主な例を見てみましょう。
収入が減少し、住宅ローンの返済が困難となるケースです。
収入が減少する主な理由は失業、給与カット、勤務先の業績不振、リストラなど。また、自営業者やフリーランスは、取引先の業績変化や意向、景気低迷や物価高による顧客離れ、税制・健康保険料などの見直しなどが収入減少の直接的な理由となります。
住宅ローンの契約時点で、将来収入が減少することを予測できる人はいません。全ての人にとって、住宅ローン返済中の収入減少は「想定外」の事態となります。生活費等の削減が限界に達すれば、住宅ローンの返済が難しくなる可能性があるでしょう。
教育費や医療費、介護費用などの大きな負担が重なり、家計の見直しが困難となって住宅ローンを返済できなくなるケースです。
教育費については、どの世帯でもある程度の出費を想定しているものの、お子様の成長過程における様々な変化に応じ、想定外のコストがかかることもあります(浪人、留年、大学院進学、留学など)。結果として家計のやりくりが難しくなれば、住宅ローンの返済に影響を与えるかもしれません。
また、思わぬ病気やケガにより大きな医療費がかかったり、高齢のご両親に介護が必要となったりした場合などにも、同様に家計の見直しが困難となるケースがあります。
2024年10月現在は低金利政策が続いていますが、将来的には、金利の上昇を理由に住宅ローンの返済が困難となる、というケースも生じる可能性があるでしょう。
住宅ローンを契約する際、一般的には固定金利と変動金利から選択する形となりますが、長く低金利政策が続いていている昨今、多くの人はより有利とされる変動金利を選択しています。
しかしながら、常に政府は、経済状況を注視しながら低金利政策の出口戦略を探っている状況です。金利政策の抜本的見直しが行われれば、変動金利で住宅ローンを契約している人の負担が増え、返済が困難となるかもしれません。
その他にも、転勤や転職、出産、離婚、再婚、死別など、様々なライフイベントの変化を理由に経済的負担が増し、結果として住宅ローンの返済が困難となるケースもあるでしょう。
住宅ローンを契約する時点では未来を読めない以上、想定していなかったライフイベントの急変は全ての人に起こりえます。
住宅ローンの返済が困難になった場合の選択肢として、以下、主な3つの手法を見てみましょう。
住宅ローンを契約している金融機関に赴き、リスケジュール(返済計画の変更)の相談を行います。
リスケジュールの相談に先立ち、まずは住宅ローン返済が困難となっている理由を正直に話しましょう。金融機関の担当者は、同様の相談を何度も受けています。困難になった理由に応じ、返済期間の延長や一時的に金利のみの支払いとする方法など、何らかの適切な方法を検討してくれることでしょう。
なお、住宅ローンの返済が困難になった場合の選択肢には複数ありますが、金融機関へのリスケジュールの相談は、他のいかなる選択肢よりも優先されます。
金融機関から提示されたリスケジュールでは状況打開が困難な場合で、かつ、引き続き同じ家に住み続けることを希望する場合には、リースバックという選択肢が有効です。
リースバックとは、自宅を第三者に売却した上で、その買主へ月々家賃を支払う形で同じ家に住み続ける、という手法です。家賃を負担することになるものの、住宅ローンの返済からは解放されます。
買主との契約内容にもよりますが、将来、再び収入状態が改善した暁には、改めて自宅を買い戻すことも可能です。
金融機関から提示されたリスケジュールでは状況打開が困難な場合で、また、同じ家に住み続けたいという強い動機もない場合には、不動産を売却してローンを一括返済する選択肢が現実的でしょう。
ただし、住宅ローンの返済中は不動産に抵当権がついていますが、一般的に抵当権がついたままの不動産をそのまま売却することはできません。この場合、一時的に金融機関から抵当権を外してもらい、その間に不動産を売却する特殊な手法が必要です。この特殊な手法のことを任意売却と言います。
任意売却に関する詳細は後述します。
先に触れた通り、抵当権がついたままの不動産を売却するには、任意売却という特殊な手法が必要となります。任意売却の詳細、および任意売却と競売との違いを確認しましょう。
任意売却とは、住宅ローンの滞納が発生していることを前提に、金融機関から一時的に抵当権を解除してらい、その解除期間中に不動産を売却する特殊な手法です。一般的な不動産売却に比べて成約金額は低くなる傾向があるものの、住宅ローン返済の負担を大きく軽減させられることから、返済が困難になった方々の有効な選択肢として注目されています。
任意売却により住宅ローンの残債を全額返済できれば理想的ですが、もし全額返済できず差額が残った場合でも、以後の返済は差額分のみ。多くの方は、任意売却で生活の立て直しを図ることができるでしょう。
任意売却とは異なる不動産売却手法として、競売があります。
競売とは、不動産の抵当権を持つ金融機関の判断で、対象不動産を強制的に売却する方法です。金融機関が裁判所へ申立てを行い、裁判所の命令を通じて競売が行われます。
競売による売却金は売主(住宅ローン返済が困難となり競売にかけられた側)の手に入りますが、一般的な不動産売却に対して6割程度の金額となるケースが多いため、売却金のみで住宅ローンを完済することは難しいかもしれません。完済できなかった差額は、引き続き返済する形となります。
一方、任意売却による売却金は、一般的な不動産売却に比べ8~9割程度と、競売よりも有利な傾向があります。ケースによっては売却金で住宅ローンを完済できる可能性もあり、仮に完済できなかったとしても、競売よりも残債は少なくなる可能性が高いでしょう。
返済を受ける側(金融機関)にとっても、返済する側(住宅ローンの返済に困っている人)にとっても、競売より任意売却のほうが好ましい選択肢と言えるでしょう。
ただし、任意売却を行うためには、金融機関に抵当権を外してもらうための交渉が必要となります。仮に交渉が成立して売却活動へ入ったとしても、対象不動産がすぐに売れるとは限りません。金融機関は、同時に競売の申立ても行っているため、任意売却に時間がかかり過ぎると、競売のタイムリミットが到来する恐れもあります。
任意売却には時間がかかることを理解の上、住宅ローンの滞納が始まった段階で、または滞納が予測された段階で、速やかに金融機関や不動産会社等へ任意売却の相談をするようおすすめします。
住宅ローンの返済が困難になったときの主な相談先を見ておきましょう。
自分で対象不動産の買主を探せる場合を除き、一般的に、不動産を売却する際には不動産業者への相談が必須となります。特に任意売却を選択する可能性がある場合には、速やかに任意売却に詳しい不動産業者へ相談するべきでしょう。
任意売却を前提に不動産業者へ相談すれば、以後のプロセスをスムーズに進められます。金融機関に抵当権を外してもらう交渉においても、不動産業者の同席があれば説得力が増すでしょう。
もとより、対象不動産の査定や適切な売却価格の設定、迅速な売却活動などのベーシックな部分は、不動産業者のサポートなくして成り立ちません。
住宅ローンの返済が困難になってきた以上、債権者である金融機関への相談は不可欠です。滞納が始まってから相談するのではなく、返済が難しいと感じた段階で、速やかに金融機関へ相談しましょう。
相談を受けた金融機関は債務者の状況を踏まえ、滞納に至らないよう柔軟に対応してくれるケースが大半です。通常は、現在や将来の収入状況に合わせ、現実的な返済計画への見直しを検討します。
計画を見直しても返済が困難で、やむを得ず任意売却を選択する場合でも、任意売却の可否を決めるのは金融機関になります。
不動産の任意売却や競売に関連する法的手続きについては、弁護士の助言を仰ぐことでスムーズに売却プロセスが進行します。弁護士への相談が必須なわけではありませんが、法的側面や契約上で不安がある場合や、不動産業者や金融機関からの提案があった場合には、念のため弁護士のサポートを受けたほうが良いでしょう。
住宅ローンの残債が少なく、かつ、意外に不動産評価額が高かった場合、任意売却により譲渡益が発生するケースもあります。譲渡益が発生した場合、利益の部分に対して税金が課されるため、正しい納税額を計算する上で税理士のサポートが有効となります。
節税につながる助言を得られることもあるので、譲渡益が生じる場合には、ぜひ税理士に相談してみましょう。
任意売却であれ競売であれ、不動産を売却した後は、新たな生活のスタートに向けた設計を綿密に行わなければなりません。まずは、以下の2点を軸に新生活への舵を切りましょう。
任意売却等を通じて住宅ローンを完済できれば理想的ですが、仮に残債が残ったとしても、以後の返済は大変楽になります。このタイミングで今一度、安定した生活へ向けた資金計画を立て直しましょう。
安定した生活のためには、まず住居を確保する必要があります。住居の確保に伴い、日常生活に必要な各種設備を整える必要もあるでしょう。これら新生活の立て直しに必要な出費と予定されている収入を比較し、再び生活が困難にならないよう具体的な資金計画を検討してください。
新生活をスタートさせる上で最も重要となるテーマが、住居の問題です。
リースバックで今までと同じ住居に住み続けられるなら問題はありませんが、他へ引越す場合には、いくつかの選択肢が想定されるでしょう。可能な限り手頃な住居として、実家に住むことを検討する方もいますが、実家が遠方にある場合、勤務先までのアクセスやお子様の転校など、現実的な課題のある方も多いと思われます。
住宅ローンの滞納履歴が残っている以上、当面の間、新たに住宅ローンを契約することはできません。結果として、賃貸住宅への住み替えを検討することが一般的な選択肢になのではないでしょうか。
将来の家族のライフイベント等を考慮し、慎重に住み替えを検討するようおすすめします。
住宅ローンの返済が難しいと感じられてきたならば、滞納が始まる前に、速やかな対処が必要です。
対処法の1つとして不動産の売却は有効ですが、必ずしも全ての事案においてベストな選択肢とは言えません。まずは金融機関に相談し、リスケジュールの提案をしてもらいましょう。提案された内容で返済できる見通しが立ったならば、それに越したことはありません。
金融機関から提案されたリスケジュールでは返済の見通しが立たなかった場合には、不動産業者等の専門家に相談し、任意売却やリースバックを検討します。これらの選択肢を十分に理解し適切に活用すれば、少しでも有利に事態を解決できる可能性が高まるでしょう。
滞納が数回続けば、金融機関は裁判所へ競売の申立てを行います。任意売却を行うならば、競売の落札より先に買主を見つけなければなりません。タイムリミットがあることをよく認識し、早めに金融機関や不動産業者へ相談するようにしましょう。
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